医療・介護・福祉の間接業務について、RPA(ロボット・プロセス・オートメーション)化へのトライを!

2018年05月11日

 第4次産業革命が叫ばれ、昨年2017年6月9日に、政府は「未来投資戦略2017」を閣議決定し、医療・介護・福祉の世界では、介護ロボティクスの普及や開発推進が命題となっている中、ある意味、この数年、AI(人工知能)や産業ロボット、医療や介護分野でも補助金政策等により、ロボティクス、IOTが話題になってきた。大手企業では、デジタルと人の一体化の促進、いわば「デジタル経営」に先んじることの必要性が重んじられ、CDO(Chief Digital Officer)を任命配置し、試行錯誤を繰り返している事例も散見される。現代の企業における大命題は、生産労働人口の減少の影響をもろに受け、人材の確保のための「働き方改革」であることが常識となっている中、近年、加速度的な進化を遂げ、企業等への導入・活用が急スピードで進んで
いるのが、RPA(Robot Process Automation)である。

 

 RPAとは、ソフトウェアのロボットにより、人の代替をすることでパソコン操作などを自動化し、業務の品質向上、作業時間の短縮、業務変更対応性向上などの業務の生産性向上を実現するソリューションであるというもの。産業用ロボットが工場のオートメーション化に一役買ったように、RPAはホワイトカラー業務、間接業務の自動化を後押しするものとなっている。医療・介護・福祉分野でいえばまさに、本部機能を担う各種のプロセスを効率化する可能性を秘めている。

 2014年から、欧米においてホワイトカラーの業務を代替するソフトウェア・ロボットがいくつか登場し始めていた中、このようなソフトウェア・ロボットとそれらを活用した業務改革手法を総称して、英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのレスリー・ウィルコックス教授らが「RPA」と命名したと言われている。「従来は人間のみが行うことができると考えられていた作業を代行するもので、高度化するソフトウェア、及びそれらを利用した業務改革手法」と定義される。

 もっと簡易に表現すると、このRPAの仕組みは、「パソコン上で人間が行なっている様々な操作をロボットが記憶し、人間に代わって自動で実行する」ということである。ロボットが部下になるようなものであるため、ロボットに仕事を教え、実行させることになる。別名、「デジタルレイバー(Digital Labor)=仮想知的労働者」とも呼ばれている。

 

 自動化による生産性の向上、効率化の実現としては、AI(人工知能)が大きく話題になり続けているところであるが、その違いを理解する必要がある。両者の特性は異なるからである。

 

 AIは、大量のデータを学習・解析(ディープラーニング)し、推論により自らルールを発見・定義する。適用範囲は大変広いが、100%の精度で処理が可能となるまでには長い時間と膨大な費用がかかるのが特徴のため小粒な業務に適用させても費用対効果が合わないとされる。いわば、「ルールを自ら発見・定義して自動化」するのがAI。それに対して、RPAは、人間が判断ルールや各判断結果における処理を全て事前に指示する。そのため、ルール内の処理はすぐに100%こなせるが、ルール外の処理はできないということになる。このようにRPAは適用範囲は狭いが、効果の即効性があり、すぐに効果を出して投資回収ができるため多くの法人がトライしやすいものと言える。

 

 AIは人間では代わりができないことができるので価値が高い、しかし多額の投資が必要で長期的なビジョンに立った導入が向いている。

 一般に医療や介護、福祉の業界が求めているのは、間接業務を間違わずに人手を使わずに処理できることだと思われることから、RPAのように人間が決めたルールどおりに動作する、そのルールの範囲内では100%正しく処理できる、かつ短期での導入が可能ということで、費用対効果が高いことが予想される。

 ただし、現時点ではRPAは「定型業務の自動化」が中心となっているが、近い将来的にはAIなどの技術と連携し「一部非定型業務の自動化」や「高度な自律化」の方向へ向かっていることにも期待は高まる。

出典:PHJ提携パートナー株式会社BIT ホームページから

 

 一般的に、RPA導入で優先すべき対象業務としては、①絶対的に作業時間が多い業務(1回の作業時間、作業頻度、作業者の人数の積が単純に多い)、②同様の作業が多い業務(同様の作業を商種や取引先等の単位で行っている)、③作業時間が就業時間外となる業務、④作業時間が限定的で他作業を中断して行う業務、⑤作業者が要望する業務(絶対作業時間そのものはそれほど高くないが作業難度や作業負荷が高い)とされている。

 さらに具体的に言及すると、RPAの基本的な動作は、システムへのデータ入力(メール送信を含む)や、システムからのデータ出力(メール受信を含む)が中心となり、それらの動作を組み合わせた形で業務の自動化を実現することとなるということを前提として、次のような部門、業務プロセスが導入の検討に値する事例と思われる。(逆に例示のプロセスに限定されるわけではないことにもご留意いただきたい)

 

1 経理部門

①売掛・入金業務   対象作業の概要

 債権情報や入金情報に従い、回収予定表の作成、入金消込等を自動的に処理。人手による入金承認を経て、会計システムへの入金・消込仕訳入力等の処理の自動化。

②買掛・支払業務   対象作業の概要

 債務情報に従い、支払予定表の作成、支払消込等を自動的に処理。人手による支払承認を経て、会計システムへの支払・消込仕訳入力やFBデータの作成等の処理を自動化。

③資産管理業務   対象作業の概要

 固定資産、リース資産情報に従い、会計システムへの取得/除去、支払、減価償却仕訳入力や税務署へ提出する償却資産税申告書データの作成等の処理を自動化。

④経費精算(交通費等)確認業務

 対象作業の概要

 各人から提出された交通費請求に対して、役職に準じた交通手段の確認と、移動区間価格の妥当性をWebサイト等で確認する作業の自動化。

 

2 人事・総務部門

①過重労働管理業務 対象作業の概要

 月中に労働時間を集計し、月末において過重労働となりそうな従業員を検索。対象となる従業員の上長および本人に対して、メールにて状況を通知することで過重労働を抑止。さらに、過重労働となってしまった従業員の上長および本人に対するメール通知と、対策等の回収作業(期限未回答の場合の催促を含む)を自動化。

②人事考課業務 対象作業の概要

 各従業員に対し、前年結果を含んだ人事考課表の作成やメールによる配布、および上長からの考課結果の回収作業(期限未回答の場合の催促を含む)や考課結果の一覧作成等の処理を自動化。

③経営者向けレポート

(月次報告書)作成業務

 EX経営層に対して詳細な業績や損益・予測情報を提供するために、SFA/CRM/ERP(販売、購買、在庫、会計)やプロジェクト管理等の各システムから必要な情報を収集し、経営向けレポート(月次報告書)作成等の処理を自動化。

 

3 購買部門

①メール発注業務

基幹システムに登録されている購買情報に従って、仕入先に対してメール添付にて発注書を送付する作業の自動化。

②WebEDI出荷業務

 基幹システムの出荷情報を仕入先や、得意先が運用するWebEDIシステムへ登録する作業の自動化。

 日本の労働生産性は、日本生産性本部の「労働生産性の国際比較(2016年度版):によれば、主要先進7カ国の労働生産性(2015年)は日本が最も低く世界で22位となっている。それに加え、経済産業省「新産業向上ビジョン」によると2015年に6334万人だった就業者数は、2030年には約0.9倍の5599万人に減少することが見込まれている。また過残業による事故や事件、労務管理上のリスクは医療及び社会福祉分野は高リスク業界とされている。この現実をなんとか改善しなければならない。

 

 平成30年5月2日の日本経済新聞のコラムでは、SOMPOケア代表取締役会長奥村幹夫氏が、「私は書類の多い金融業界の出身だが、介護業界の膨大な書類量には驚かされてきた。例えば、我が社のグループ内の介護会社2社で業務の効率化に向けた統合作業をしたときは、1事業所あたりA4サイズのバインダーが50センチメートルほど積み上がった。全国で同様の作業をすれば、書類はトラック1台でも収まらないと思い途方に暮れたことがある。(中略)介護事業者の仕事の中心は言うまでもなく、現場で利用者と親身に向き合うことだ。利用者の安全とともに外出などの自由を確保するため、事業者側がやるべきことは多くある。事業者としてサービスの充実は責務であり、職員もケアすることにはやりがいを感じている。だからこそ行政には、我々事業者とともに書類の簡略化とデジタル化に真剣に取り組んでもらいたい。」と述べていらしたが、今こそ、経営者はデジタル戦略投資の観点から、常に半歩づつでも医療・介護の間接業務の生産性向上を進めて行く必要がある。