「地域共生社会」実現政策の本質を見据えた、社会福祉法人の「存在意義」の獲得の必然性

2020年01月07日

令和元年11月18日に開催された厚生労働省の地域共生社会推進検討会において「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ(素案)」が公表された。次回2020年夏の通常国会で提出を予定している3回目の社会福祉法改正法案の中身である「包括的な支援体制の構築に向けた事業の枠組み」について、『つながり続けることを目指すアプローチを強化し、市町村における地域住民の複合化・複雑化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制の構築を推進するためには、中間とりまとめにおいてその必要性が確認された以下の3つの支援を内容とする、新たな事業の創設を行うべきである。

1 本人・世帯の属性にかかわらず受け止める、断らない相談支援
2 本人・世帯の状態に合わせ、地域の資源を活かしながら、就労支援、居住支援などを提供することで社会とのつながりを回復する、参加支援
3 地域社会からの孤立を防ぐとともに、地域における多世代の交流や多様な活躍の場を確保する、地域づくりに向けた支援

○ この3つの支援を一体的に行うことによって、つながり続けるアプローチ のもと、本人と支援者、地域住民との継続的な関係性を築くことが可能となり、 これらの関係性が一人ひとりの自律的な生を支えるセーフティネットとなる。 』

としている。さらに「包括的な支援体制の構築」の1丁目1番地である「断らない相談支援」のスキームについては、『 断らない相談支援を円滑に進めるためには、具体的な機能として、1 属性にかかわらず、地域の様々な相談を受け止め、自ら対応又は関係機関につなぐ機能2 多機関協働の中核の機能(世帯を取り巻く支援関係者全体を調整する機能) が必要となる。 さらに、支援に時間を要し、継続的な関わりが求められる事例や一人では相談支援機関の窓口まで来ることができない事例への対応のため、3 継続的につながり続ける支援を中心的に担う機能も求められる。』とした。すべては福祉の優先課題を、縦割りの専門分野別の解決型アプローチのみではなく、全カテゴリーを横串で貫く「孤立」にフォーカスしたものと見ることができる。孤独は個人の心の問題ととらえられることが多かったが、例えば2018年、内閣に「孤独担当大臣」のポストを新設し、政府が対策に乗り出している英国では今、政府と民間が協力しながら、個人の「孤独」に対処しようという機運が生まれている。孤独という心の内面に関わる領域に政府が踏み込むのは前代未聞で、多くの海外メディアは驚愕の念をもってこのニュースを報じた。2017年12月、英国の孤独問題対策委員会は13の慈善組織と協力しながら、孤独がいかに個人の生活全体や社会のあらゆる面に影響を及ぼすかを調査し、報告書を発表。そこでは「孤独はすべての年齢層、社会的背景を持った人に影響を及ぼす。友達を作れない子供、初めて子を持つ親、友人や家族に先立たれた高齢者といった人たちである。孤独状態が慢性化すると、健康に害を及ぼし、人とのコミュニケーションができなくなるところまで追い込まれる。孤独は、1日にタバコを15本吸ったのと同等の害を健康に与える。雇用主には年間25億ポンド(約3700億円)、経済全体には320億ポンド(約4.7兆円)の損失を与える」としていたのである。そんな「孤独・孤立」という福祉課題に本格的に取り組む時代が我が国に到来することとなったといえる。

さらに、厚生労働省の「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ(素案)」では、

『新たな事業の実施主体は市町村であるが、本人や世帯の状態に合わせた支 援を行うためには、日頃から支援に携わっている NPO、社会福祉法人、社会福祉協議会などの民間団体とも協働して体制を組む必要があることから、それらの団体も事業を実施することができるよう事業の委託のための仕組みを設けることが必要である。なお、委託に際しては、価格面のみによって評価するのではなく、事業の内容にも着目し支援の質や事業の継続性などを総合的に評価していくことも重要である。』としており、社会福祉法人制度改革の真の目的を披瀝しているといえる。「地域共生社会実現政策」のプレイヤーは、市町村ではなく、あくまでも、基本、社会福祉法人なのである。市町村はプロデューサー(予算は限りなく低予算?となるだろう)、社会福祉法人が監督・脚本・演出及び主役俳優、NPO法人はバイプレイヤー俳優といったところか。 さしずめ自主制作映画かもしれない。良い映画を制作するためには多くの資金の調達が必要である。だからこそ寄付金募集(ファンドレイジング)機能が必要となる。社会福祉法人経営者協議会青年会地域活動実践委員会が著した2017/2018年度「地域共生社会実現に向けた社会福祉法人の実践」では、地域共生社会の実現に向けて社会福祉法人が果たすべき使命として、『私たち社会福祉法人は、他の事業主体とは異なり、「公益性」、「非営利性」といった特性を有することから、税制面での優遇をうけており、この特性にふさわしい事業主体であることを広く国 民にアピールするためにも、地域の生活・福祉課題に対し、最前線に立って対応していかなければなりません。 すなわち、多様化するさまざまな地域ニーズに「地域における公益的な取組」を通して 対応し、地域共生社会を主導していくことが、すべての社会福祉法人に求められています。』と訴えている。

 しかし、実際には現況報告書(平成 29 年度)に「地域における公益的な取組」を記載している法人は、全社会福祉法人のうち約 20%~30%(全国経営協調べ)にとどまっており、取組の実施と情報発信について課題が残っているという現状があるようだ。

以前、社会福祉法人が非課税法人・公益法人としての「存在意義」を有している理由は、第1種社会福祉事業の国民生活へ与える影響の重大性とその重大性ゆえに、第1種社会福祉事業の経営が法的に許されている・限定されている社会福祉法人には非課税優遇に値する「存在意義」がある、国民にとって「有益性」があるという「循環理論ロジック」であったが、今や第1種社会福祉事業は金看板ではなくなったようだ。その証拠に、最新の社会福祉法人の設立認可基準を確認すると、第1種社会福祉事業の経営は必須ではなくなっている。(令和元年10月10日東京都福祉保健局 指導監査部 指導調整課 社会福祉法人担当 社会福祉法人設立認可説明会「社会福祉法人設立に向けた留意事項について 」)例えば高齢者福祉なら、認知症グループホームか小規模多機能型居宅介護を5年以上経営していることなどである。特養ということにはなっていない。

そうなると、高齢者福祉カテゴリーで考えても、多くの株式会社がいくらでも社会福祉法人設立に手を挙げることができるということになる(ローカルルールで市町村が拒否をした場合は別として)。とすれば、「存在意義」は何か?

近い将来、明らかに、「制度外サービスを積極的に、民間から資金を調達しながら事業計画し、実施する」という「民間福祉の担い手=地域共生社会実現政策の担い手」となることしか、非課税という税制優遇を受けるだけの「国家における存在意義」や「国民視点での有益性」は確認できないということになるとしか考えられないのではないだろうか。