改革への逆行は社会福祉法人の経営力の弱体化を生む 〜旧厚生省が産み落とした公益法人、社会福祉法人の正念場

2019年12月31日

 

令和元年1 1月5日(火) 、自民党の社会保障制度調査会介護委員会が開催された。同委員会の委員長は元厚生労働大臣の田村憲久氏である。厚生労働省老健局から「介護保険制度改正に関する議論の状況について」、及び社会・援護局から「地域共生等の施策に関する議論の状況について」種々の説明があり、その後、自民党議員側からの質疑や意見が出された。

社会福祉法人制度改革の一環としてガバナンス・内部統制強化を旗印にして導入が決められている「会計監査人設置社会福祉法人」の適用範囲事業規模拡大の可否についてのテーマも内容として含まれていたが、一部の国会議員の意見の内容に社会福祉法人の業界を「過保護に」支援する国会議員の毒親ぶりが改革拒否カルチャーの根深さを感じさせた。それは、見事に社会福祉法人制度改革の本旨と大きく逆行させる意見でもあった。

  • 「会計監査人の設置基準引下げは反対。社会福祉法人は多種多様な種別があり、金額による一律の線引きは妥当でない。保育では自治体域を超えると施設間での資金を移すことはできない仕組みとなっており、 行政からの監査も毎年の施設監査、3年に1回の法人監査等により、悪いことができない中小企業で売上 10億で会計監査人設置ということにはならず社会福祉法人だけ基準引下げることは「社会福祉法人は悪いことをする」と疑っているようなもの」

→当該意見は前提条件がトンチンカンのため、失言レベルである。学校法人の会計監査設置基準をご存じ無いらしい。かつお花畑な「性善説」で、古き良き日本を思い出させてくれる。

  • 「社会福祉法人の経営について、透明性・公益性があることは理解するが、社福の成り立ちや現場の厳しい状況、多様な種別があることを踏まえて議論する必要。社福は毎年施設監査があり、加えて法人監査がある。会計検査院も来る。会計監査人は屋上屋になっていないかという点でも議論が必要 」

→「社福の成り立ち」を踏まえ路ということは、措置制度時代の「運営」だけしていればよかった時代の経営常識をベースに考えろということで、実質「改革することがおかしいとのご意見。「現場の厳しい状況」は、社会福祉法人に限ったことでは無い。また、そこまで自由を社会福祉法人に望ませるなら「全所得課税法人化」を推進とセットのご意見として受け止めることができるが、それで良いのだろうか?

社会福祉法人はその出自の関係や、人員基準の厳守が法人経営、施設・事業所経営の根幹であること、また、組織内で職能別の専門職は存在するが経営層・管理者層・一般職の各階層において、「マネジメントの原理・原則」に係る専門職が存在していない・学んだことがないという事実、旧厚生省時代から大元の厚生労働省が「法人本部」ではなく、各施設・各事業所ごとへの直接の監督業務を推進してきたことなどが影響し、「施設・事業所ごとのバラバラ運営」がカルチャーになってきた。社会福祉法人制度改革ではその経営上のウィークポイントを改革し、「本部機能の強化」の旗を振り始めたはずである。その一環で大規模社会福祉法人の定義を決め、会計監査人設置社会福祉法人=「特定社会福祉法人」の制度を作ったのである。会計監査人による事業高30億以上の法人に対する指摘の「あるある」は、多施設間で、同じ業務については、施設ごとのバラバラな手順ではなく、「業務の標準化」を行なってくださいというものであった。これは民間事業会社なら「当たり前」の話である。かつ、社会福祉法人改革は、「地域共生社会実現」政策推進のターボエンジンとしての位置付けであるはずである。「シン(新)・社会福祉法人」は、「制度内事業」だけではなく「制度外事業」「慈善事業」「地域公益事業」を積極的に事業計画の立案をし、財源を民間から資金調達(ファンドレイジング)し、言われなくても動く、「THE 公益法人」として日本社会に「有益性」を与え国民・財務省に、非課税法人としての「存在意義」を評価させるというレールを敷いたのではないのか。

小泉進次郎環境大臣が、自民党厚生労働部会長時代の「新たな社会保障ビジョン」には、こう書いてある。「厚生労働行政の内輪の論理重視ではなく、供給者目線から国民視点へ」。大切なのは、すべての社会福祉法人を守ることではない。国家を、国民生活を守る「シン(新)社会福祉法人」を育てることである。

 

周りを見渡すと、こんなニュースがある。「全国の中小企業のうち後継者が決まっていない企業の割合が55・6%に上ることが7日、民間信用調査会社の東京商工リサーチのサンプル調査で分かった。代表の年齢が80歳以上でも4分の1を占めるなど、経営者の高齢化と後継難が同時進行しており、急病などで事業継続が難しくなるケースが増加しているという。後継者が不在という割合は、業歴が浅い新興企業が多い情報通信業が74・1%と最も多い。また人手不足が深刻な小売業や建設業、運輸業など労働集約型の産業を中心に、大半の業種で不在率が5割を上回った。」どうやら後継者不在問題は、社会福祉法人も例外ではないようである。

さらに、2019(令和元)年10月は、ネットニュース含め、3つの社会福祉法人の実質経営破綻のニュースが流れた。

 

「シン(新)・社会福祉法人」の経営者は、「科学的マネジメント」を一から学ぶ直す必要がある。従来型の「社会福祉法人は現場の意向を尊重して・・・」「現場が強いよね・・・」「ご利用者・入所者だけを見ていれば・・・」から、スピーディーに、マネジメント改革をする必要がある。実のところ、財務会計に係る内部統制は10年早いのではないかとも感じる。その前に、学び直し、構築すべきマネジメントの体制がある。社会福祉法人の経営現場では、各階層が、悪気のない経営者による誤った「統制環境構造」の構築・運用が要因となり、管理職・一般職が、「事実」とは異なる多くの「バイアス(思い込み)」「錯覚」「無理解」「無認識」の中で働いている。それが生産性を低下させているのである。

 

一例の「事実」は、経営者(及び上司)は、業務命令決定責任者であり、部下は、「業務命令実行責任者」であるということ。「現場の意向を加味して・・・」などというのは経営者が「免責」状態になっている証左である。これも錯覚である。

 

組織には「位置」がある、「位置」には「役割」があり、その「役割」を明示するために「役職」が任命されている。「役職」には「責任」があり、「責任」を果たすために「権限」が付与されている。組織図とリアルな「位置」→「役割」→「役職」→「責任」→「権限」が整合が取れており、完全結果の「絶対(統制)ルール」が決められ、上司はそのルールを部下に遵守させるのが上司としての最低限の仕事であることを認識している。また、部下を育成するための「成長ルール(目標の設定と達成のためのルール)」の結果を設定し、到達までのマネジメントを上司の位置にいるものが全員実践できている。「経営判断はスピード、人材育成は時間を与える、スピードは横に置く」というマネジメント原理・原則を理解し、経営現場で実践しているか等を問わなければならない。

まずは、その前提からの学び直し・マネジメント手法の確立と運用が必要である。過去40年間我が国で通用した(ように錯覚してきた)、主観マネジメント・経験値マネジメントは、これから活躍すべき20代〜30代には、何一つ通用しない。

生き残り、「地域共生社会実現」政策の担い手として機能したい社会福祉法人の経営者は、「科学的マネジメント」=「応用行動分析学(ABA)マネジメント」の学びが必要である。