刻々と取り巻く環境が悪化していく『高齢者福祉社会福祉法人』に、もはや残された時間は少ない〜特別養護老人ホームは法人の稼ぎ頭から、新たな経営ノウハウが必要な事業モデルに変貌したへ

2019年03月08日

「地域共生社会・ポスト成長時代における社会福祉法人の「公的福祉+民間福祉」経営戦略」

第2回 刻々と取り巻く環境が悪化していく『高齢者福祉社会福祉法人』に、もはや残された時間は少ない〜特別養護老人ホームは法人の稼ぎ頭から、新たな経営ノウハウが必要な事業モデルに変貌したへ

 

独立行政法人福祉医療機構は、平成30年11月5日に、介護施設・事業所を対象に、平成30年度介護報酬改定に関するアンケート調査 実施結果を公表した。

特別養護老人ホームでは、全体で 「増収」が 33.5%にとどまり(図表 1)、損益状況をみると「増益」よりも「減益」となった施設がわずかに上回る(図表 2)状況であった。「増収」が一定割合にとどまったのは、「減収」 施設で利用率の変化(低下)を主な減収要因であったことが大きく(図表 3)、その要因は近年の、介護人材の確保難の環境のなかでの稼働率の低下という人材不足国家の我が国の事情が、特養の経営の厳しさを引き起こしている状況といえる。

措置時代は当然として、介護保険法施行後に契約に移行した後も、特別養護老人ホームは高収益ビジネスモデルとして一般に認識されてきたはずだが、近年は事情が異なってきている。

また、同じくWAMNETによる平成30年12月19日付で公表された「平成 29 年度の社会福祉法人の経営状況について」の分析結果では、平成29年度の社会福祉法人の赤字割合は、前年度から拡大し 24.8%となっており、さらに主たる事業別に法人の決算状況を比較すると、サービス活動増減差額比率は保育事業 主体法人か5.7%ともっとも高く、次いで障害福祉サービス事業主体法人 4.0%、介護保険事業主体法人2.5%、老人福祉事業主体法人1.8%と続いている。(図1)

サービス活動増減差額比率でみると、介護保険事業主体法人および老人福祉事業主体法人は、赤字割合も高く30%を超えており厳しい経営環境にあること明らかにされている。 同じく福祉医療機構が実施した介護人材に関する別の調査 においても、特別養護老人ホームで従事者が集まらず、本体やユニットの一部または併設施設で受入れを制限しているとの回答が全体の約12%を占めていた。これは、介護人材不足が収支を圧迫するという負のスパイラルに陥っている施設が一定割合存在することを示している。

さらに、平成29年3月に、みずほ情報総研株式会社により公表された「平成 28 年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 :特別養護老人ホームの開設状況に関する調査研究」では、全国の特養を対象に、直近 1 年以内に設した施設を除く開設後 10 年以内(約10年前から新設施設が原則ユニット型個室となっている)の 1,151 施設に対してアンケート調査を実施しており、その報告書によれば、政令指定都市及び東京都特別区部では「空きがある」と回答した施設が 31.1%であった。またユニット型個室の50定員以上では空き状況が35〜56%以上と大変厳しい経営状況が目立つ。そして空床が生じている要因には、「職員の採用が困難」、「職員の離職が多いため」、「医療的ケアが施設で対応できない」などの「施設側の提供体制」に関するものと、「入居申込者数が少ないため」などの「施設提供体制外」に関するものに大別されている。その他の要因には競合の類型の居住系サービスの存在がみてとれる

これらのデータは、収益の確保と職員の確保をうまく両立させることが重要視すべき課題であることを示しているのだが、高齢者福祉専業・介護保険事業専業社会福祉法人のどこまでの経営者が現実的にこれら経営課題と真摯に向き合い戦略を検討・策定し、実行に移しているだろうか。未だロジカルな根拠のない「特養神話」に依存し、人口密集地域への進出を検討していないだろうか。

データから読み取れるのは(現段階では)、①特養における人員確保の困難さを乗り越えなければ未来はない。そのため、地域において、職員の新規採用及び職員の定着率の向上のための特養経営上の圧倒的な差別化の武器を持たなくてはならない、②医療的ケアの必要な高齢者への対応が地域包括ケアシステムの根幹である以上、現状維持では対医療機関との関係では紹介されない、蚊帳の外になる。そのため、医療的依存度の高い高齢者の受け皿となる事業を手に入れなければならない(個室ユニット型特養ではなく、その他の医療型事業モデルの検討)という2点について、経営者は早急に手を打たねばならない。

特養ならうまくいく〜ではなく、「高度急性期病床、回復期リハ病床、地域包括ケア病床から医療依存度高い高齢者を受け入れられる施設ならうまくいく」である。また、「特養なら職員は確保できる、定着する」ではなく、「どのような特養なら職員が確保でき(外国人も含め)。定着する率が高まるのか」を理解し、実行に移さなければならないのである。高齢者福祉専業・介護保険事業専業社会福祉法人は新たなる攻守にわたるビジネスモデルのPDCAを急がねばならない。②は、HMS(保健・医療・福祉サービス研究会や船井総研で実施している経営戦略セミナーでも定期的に開催されている医療依存度高モデルのセミナーにおいて学ぶべきである。①についてはまた別の機会に解説をさせて頂きたい。