ケアプランは定型業務?非定形業務?〜AIによるケアプラン作成を考える

2018年08月08日

平成30年8月3日に、茂木敏充経済財政・再生相は閣議に2018年度の年次経済財政報告(経済財政白書)を提出した。内容の大筋は、「人工知能(AI)などの新技術の進化により、機械がこなせる業務が増えてきているが、日本では活用が遅れている。AIなどの導入と同時に新技術を活用できる人材育成の投資も進め、生産性を高める必要がある」というものであった。内閣府による企業の意識調査などによると、AIなどの新技術の導入で減る見込みの仕事は「一般事務・受付・秘書」「総務・人事・経理」となっており、代替を考えている業務は「会計・財務・税務」「書類作成」などの定型業務があがっています。同白書では、日本が新技術の活用で遅れ、他国より定型業務が多く残っていると分析し、「非定型業務への労働移動を迅速に行うことが重要」としている。機械に代替できない仕事に働き手が専念することで効率性もあがるという見方のようである。

そもそも論だが、「定型業務」とは、一般に、データ入力や伝票整理、記帳、請求書作成など作業内容に一定のパターンがあってマニュアル化、外注化が可能な仕事で、世界中どこへ行ってもSOP(Standard Operating Procedure/標準作業手順書)があり、具体的な作業や進行上の手順が一つ一つの作業ごとに決まっている。

もう一方の非定型業務は、自分の判断や思考力を使ってすすめる業務で、経営戦略の構築や事業計画の策定、新しいサービス・製品の企画・開発、対外的な交渉など個人の思考力、判断力、経験が要求されるクリエイティブな仕事であり、自動化してAIやロボットに置き換えるのは難しいとされているものである。問われるのは「答えを出せたかどうか」「問題を解決できたかどうか」ということだけで、つまりは時間ではなく成果で計る仕事なので、極端に言えば法人にいる必要もないものといえる。

介護や福祉の世界でも、定型業務と非定型業務が明確に存在するわけであるが、政府が、「未来投資戦略2016」を閣議決定し、AIによるイノベーションを図る政策を発信したあたりから、AIによるケアプラン作成が大きな話題になり始めている。現在もそのようなプロジェクトが全国各地で進んでおり、各メーカーも「AIによるケアプラン作成!」と派手にPRを始めている。こうなると、「ケアプラン作成業務」は、AIによる効率化・自動化が図れる「定型業務」であるという認識ということになる。ケアプラン作成が定型業務とすれば、一定のパターンがあってマニュアル化が可能であるということになるが、「自立支援に資するケアプラン」と「お世話型ケアプラン」の二つが存在している現実からするとどちらになるのか?政府は「自立支援に資するケアプラン」と明言しているので、当然「自立支援に資するケアプラン」が定型業務と解釈して、人間の手から離す理屈になる。そうなると「自立支援に資する」という成果を求めるケアプランということになるため、幾分、非定型業務のポイントである「成果で計る業務」にも見えて来る。

内閣府の平成25年年次経済財政報告での「定型業務」のジャンル分けでみると、「定型認識」が、「あらかじめ定められた基準の正確な達成が求められる事務的作業。計算・計測・点検・データ処理・接客等が含まれる。」とされ、「定型手仕事」は、「あらかじめ定められた基準の正確な達成が求められる身体的作業(手作業あるいは機械を操縦しての規則的・反復的な生産作業)となっている。さらに「非定型業務」のジャンル分けは、「非定型相互」が、「高度な内容の対人コミュニケーションを通じて価値を創造・提供。大人コミュニケーションには、交渉、調整、教育・訓練、販売、宣伝・発表・表現・アピール、指揮・管理、助言・指導が含まれる。」、そして「非定型手仕事」は、それほど高度な専門知識を要しないが、状況に応じて個別に柔軟な対応が求められる身体的作業」としている。

「お世話型ケアプラン」であれば、「あらかじめ定められた基準の正確な達成」は、要介護度別の支給区分限度額を超えないケアプランであるから、まさに「定型認識」であろう。しかし、「自立支援型ケアプラン」であれば、「あらかじめ定められた基準の正確な達成」=ADLの改善、及び要介護度の改善・重度化防止となるが、このレベルが全国のケアマネージャーの中で定型化されているのか?という話になる。現状では、むしろ「非定型相互」が、「高度な内容の対人コミュニケーションを通じて価値を創造・提供。大人コミュニケーションには、交渉、調整、教育・訓練、販売、宣伝・発表・表現・アピール、指揮・管理、助言・指導が含まれる。」になってしまうだろう。「自立支援に資するケアプラン作成」業務を、「定型業務」としてAIにより自動生成することを成功させるためには「自立支援介護のケアプラン」のみを「履歴」・ビックデータとして利用しなければならないはずである。そうでなければ、頓珍漢な従来型のお世話型ケアプランをAIが量産してしまうことになる。埼玉県和光市のように行政が自立支援・重度化防止に資するケアプラン実現に、かなり前のめりになってマネジメントをしているような保険者の地域なら良いかもしれないが、全国のほとんどはそのような状況とはなっていない。自立支援に資するケアプランを真摯に学び研鑽しているケアマネージャーの方は全資格者のうちどれくらいのパーセンテージになるのだろうか?「自立支援型ケアプランの作成が全国標準として今まで実施されていないのであれば、そこから変えなければならないはずである。いわゆる「定型業務化」である。

AI及びディープラーニング(深層学習)が現実に介護や福祉にイノベーションをもたらすためには、人間が、法人が、高品質な「履歴」を提供できることが前提となる。医療の世界では診療行為における判断にAIを活用となる場合、前提のビックデータ・履歴は、科学的な裏付けに基づいたものであるのでイノベーションが起きることは難しくないだろう。介護におけるケアプラン作成については、科学的裏付けに基づいたケアプランの「履歴」が先に必要であるはずである。各県・各市町村保険者・営利法人・社会福祉法人は、専門性を発揮した人間による自立支援に資するケアプラン作成の「スタンダード化」をまず実現させるべきである。