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いつもお世話になっております。
PHJの谷本です。
近年、エーザイと米バイオジェンが共同開発した認知症治療薬「レカネマブ」の承認に注目が集まっています。この薬はアルツハイマー病患者の脳内に蓄積する「アミロイドベータ」を除去し、症状の進行スピードを約27%緩やかにする効果が認められています。
しかし、進行が進んでいる重度認知症の高齢者とその家族にとっては、穏やかな日常を取り戻すことは困難でしょう。
それはなぜなのでしょうか?
レカネマブの適用は、軽度認知障害(MCI)もしくは軽度認知症(早期AD)と診断されたレベルに対してのみです。進行が進んだ中等度から重度の認知症患者には投与の対象外となります。
また、この薬がもたらす効果は、症状の進行を7カ月半遅らせることが主です。
一生のうちで見ると、その効果は限定的と言えるでしょう。
さらに、副作用として脳出血や脳の腫れなどのリスクがあります。これらの要素から、新薬の存在意義について疑問を持つ方も少なくありません。
この状況を受けて、認知症の行動心理症状(BPSD)に対するアプローチとして、新たな視点が提唱されています。それは「生活習慣病説」です。
この説は、認知症は生活習慣病の一つとして捉え、生活習慣の改善によって症状の進行を遅らせる、または改善することが可能という観点を提供します。
具体的には、水分摂取・水分ケア、適度な運動による活動性の向上、腸内環境の改善、社会参加、排泄の自立といった生活習慣の見直しに焦点を当てます。
これらの対策は「科学的介護」とも呼ばれ、グリンパティックシステム(脳内の清掃システム)の働きを活性化させ、認知症の症状を緩和すると期待されています。
グリンパティックシステムは、脳内の廃棄物を排出する役割を担う、比較的新しく発見されたシステムです。
このシステムの名前は、リンパ系(lymphatic system)と脳の支持細胞であるグリア細胞(glial cells)から名付けられました。
グリンパティックシステムは、脳内の余分な液体や廃棄物を脳の外へと排出する機能を持っています。このシステムは、主に睡眠中に活動し、脳内の毒素や不要な物質、例えばアルツハイマー病に関与すると考えられているアミロイドβなどを排出します。そしてそれを推進する機能は「脳脊髄液」であるとされています。
そうです。「脳脊髄液」を構成する要素の基本は「水分」。
グリンパティックシステムは、脳脊髄液(Cerebrospinal fluid、以下CSF)を介して脳内の廃棄物を脳外へ排出します。
CSFは脳と脊髄を取り巻き、物理的な保護だけでなく、栄養素の運搬や廃棄物の排出といった重要な役割を果たします。
グリンパティックシステムの機能が十分でないと、脳内のアミロイドβなどの毒性物質が蓄積しやすくなり、これがアルツハイマー病などの神経変性疾患のリスクを高めるとされています。このため、必要な水分のケア、良好な睡眠や適度な運動、バランスの取れた飲食など、生活習慣全体の管理が重要となると考えられています。
アミロイドβが適切に排出されないと、これが脳内に蓄積し、神経細胞を損傷させて認知症の一因となるとされています。このため、グリンパティックシステムの機能が適切に働くことは、認知症の予防や進行抑制にとって重要であると考えられています。そのためには、症状消失に必要な水分の摂取、適度な運動、良質な睡眠、健全な飲食などの生活習慣が重要とされています。
「なぜ、認知症の症状改善に、水分の摂取が関係するのか」
それは、この「グリンパティックシステム」の説と深く相関している可能性があります。
これまでの抗認知症薬開発は、確かに一定の成果を上げてきました。
しかし、それはあくまで病気の進行を遅らせる、あるいは一部の症状を軽減するという限定的な効果です。
一方、生活習慣の見直しというアプローチは、患者本人の生活の質(QOL)の向上に直接寄与する可能性があります。
重度認知症の患者とその家族が求めているのは、ただ病気の進行を遅らせるだけではなく、その人らしい日常を取り戻すことです。
そこには、人間らしい尊厳と自立が含まれています。
それを実現するためには、薬物療法だけでなく、生活習慣の改善という視点が必要となります。
新薬開発はもちろん重要ですが、それと同時に、生活習慣病説に基づく科学的介護にも注目すべきです。それが、重度認知症の高齢者とその家族が穏やかな日常を取り戻す一助となるでしょう。
ではまた!
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